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2004年 12月 05日
私が受験生時代,某セミナーの憲法の問題で,「公立病院が,輸血拒否をしている未成年の患者に,その手術中無断で輸血した場合の憲法上の問題点について論ぜよ」という趣旨の問題が出たことがありました。そして,その解説は「本問では人権制約主体は公立病院なので,人権規定の私人間効力は問題とならない」とされていました。つまり,主体が公的機関であれば直ちに憲法の規定の直接適用が問題となるというわけです。
それはそれで一つのご見解ですが,公的機関の私法上の行為に憲法の適用があるかについては,百里基地訴訟最高裁判決が「憲法九八条一項…にいう「国務に関するその他の行為」とは、同条項に列挙された法律、命令、詔勅と同一の性質を有する国の行為、言い換えれば、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、したがつて、…国の行為であつても、私人と対等の立場で行う国の行為は、右のような法規範の定立を伴わないから憲法九八条一項にいう「国務に関するその他の行為」に該当しないものと解すべきである。」(最三判平元6月20日民集43巻6号385頁)という最高裁の先例がある以上,公立病院とはいえ市立病院と全く同一の態様で締結された診療契約に基づいて行われた事実行為についても,この判例の射程が及び憲法の規定の直接適用はないと解するのが自然ではないでしょうか。もちろん,この判例は統治機構に関する先例であって人権規定については射程が及ばない,あるいは最高裁の解釈は誤っているというのかもしれませんが,それならそれでなぜそのような解釈を採るべきなのか説得的に論証すべきなのです。 筆者はこの最高裁の解釈を全面的に支持すべきであると考えています。人権というのは本来国民の国家に対する権利であって,これを侵害ないし制約できるのは公権力しか存在しません。そして,何らかの法的根拠に基づく行為であればその法的根拠が憲法に適合するか判断すればいいのですし,法的根拠がない事実行為ならば端的に違法な行為とすれば良いだけの話です。 公法と私法は峻別されなければなりません。個人の自由をその意思に反して制約できるのは,基本的には国家が立法を通じてのみできると考えるべきです。そして,憲法等はこの個人の意思に基づかない自由の制約をする強制的かつ権力的な関係のみを規律すればそれで十分です。個人が,自分の意思でその自由の制約に同意するなら,それは契約法理であり,私的自治に委ねればそれで良いのです。 そういった意味で,私はこの先例の持つ理論的価値というのは,意外と大きいのではないかとひそかに思っていたりするわけです。
by humitsuki
| 2004-12-05 08:29
| 憲法・公法一般
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