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2018年 11月 16日
ふと,昔の非公開記事があったので,捜査の在り方についての問題提起として公開しておく。 ある少年事件で裁判官が記録を読んでいると,検察官の送致事実が警察段階と少し違うものに変えられていました。 警察段階では,少年が,自動車を運転して交差点を曲がる際,横断歩道上を2台の自転車が連れ立って渡ってきたので,「不注意にも」横断歩道に自車前部がかかる形で停止して通過待ちをしていたために,酔漢の運転していた2台目の自転車がふらふらと少年の自動車にぶつかってきて転倒して怪我をしたという事実でした。たしかに,歩行者待ちをしていただけなのに,勝手に自転車が倒れかかってきたのでは,何が過失なのかさっぱり分かりません。 そこで検察官の送致事実は,少年が,横断歩道上を時速約10キロメートルで進行して酔漢の自転車に自車前部を衝突させた,という事実に変えられていました。 一件記録を読み進めて見ると,酔漢は酔っていたので事故時の状況は良く覚えておらず,その供述調書も「相手の車は動いていたような気がします」程度のあやふやなものでした。 対して,少年の供述調書は,信号待ちをして停止していたとはっきり書かれています。 はたしてどこに少年が横断歩道上で自動車を進行させていた証拠があるのか・・・身上関係の書類をめくった一番最後のところに,一枚の電話聴取書が綴られていました。 「私が,横断歩道上に進行したときの速度は,時速約10キロメートルでした。以上」 裁判官は,すぐさま事件を「非行なし(無罪)」で審判不開始(手続打ち切り)にしました。検察官に釈明の機会を与えることなく。 おそらく,成人間近に迫った少年の事件処理に取りかかったときに,送致事実を見てはたと困ったことでしょう。歩行者の通過待ちをしていただけでは,過失を問うことが困難だからです。さいわい,被害者は相手の車が動いていたかもしれないと言っている。そこで,検察官は,少年に電話を入れて,自分の筋読みに会わせて電話聴取書を作成し,決裁に廻したのでしょう。 しかし,あれほどはっきりと自転車の通過待ちをしていたと話していた少年が,なぜ事故当時自動車を進行させていたなどといいはじめたのか,これではさっぱり分かりません。処分が怖くて嘘をついたのか,記憶がよみがえってきたのか,それとも停止する直前横断歩道にさしかかった瞬間の速度を説明した(この可能性が最も考えられるでしょう)だけなのか。供述が変遷しているのに,変遷後の結論だけ抜き出したのではどこまで信用できる自白なのか吟味のしようもありません。 裁判所と検察庁の間には,プロは過ちを犯すことはあっても故意に嘘をつくことはしないという暗黙の信頼関係があると思われますし,刑事訴訟法など関連法令も検察官の誠実性を前提にできていると見ることもできます。しかし,こういう事件処理を見聞してしまうと,法のよって立つ前提自体が揺らぐような気がしてならないのは,筆者だけでしょうか。」
by humitsuki
| 2018-11-16 08:35
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